ミックスガイド
EQの使い方|ゼロから学ぶイコライザー実践ガイド
Seimix チーム · 約12分
EQ(イコライザー)は、ミックスで最もよく使われながら、最も誤用されやすいツールです。正しい場所での数dBの調整は、こもったボーカルを前へ押し出してくれます。一方、間違った場所を触れば、ミックス全体が耳障りになったり、濁ってしまったりします。良い知らせは、EQが本質的には常識の作業だということ。各周波数帯が何を担っているかを一度理解してしまえば、あとは耳が導いてくれます。
このガイドでは、EQをゼロから、実践的に解説していきます。周波数スペクトラム、削る(subtractive)と足す(additive)の違い、high-passによるクリーンアップ、有名な200〜500Hzの濁り帯、明瞭さを生むpresence、そして艶を与えるairを一つずつ見ていきます。狭いQで問題を狩る方法、広いQで色付けする方法、そして何より、各楽器にそれぞれの居場所を作る方法まで扱います。
具体的な数値も示します。どの周波数で何が起きるのか、何dB触るのか、順番はどうか。この記事を読み終えたとき、チャンネルにEQを立ち上げて『何をするか』を勘で探るのではなく、わかっている状態になる——それが狙いです。
EQとは? 周波数スペクトラムを理解する
EQは、音の異なる周波数帯のレベルを、それぞれ独立に上げ下げできるツールです。私たちが音と呼んでいるものは、同時に鳴っている何十もの周波数の合計です。低い周波数はボディ(胴鳴り)と厚みを、中域は音のキャラクターと明瞭さを、高域は明るさと空気感を運びます。EQでこれらの帯域を個別に調整し、音を狙ったバランスへ整えていきます。
人間の耳はおよそ20Hzから20kHzまでを聴き取れます。実際にミックスをするときは、この範囲をいくつかの主要な帯域に分けて考えると作業が楽になります。20〜60Hzは深いサブ(聴くより体で感じる帯域)、60〜120Hzは低音のボディ、120〜500Hzはローミッド(ボディと濁りが出会う場所)、500Hz〜2kHzは中域(音の核)、2〜5kHzはpresence(明瞭さとアタック)、5〜10kHzはアッパーミッド(高域とsibilance)、そして10kHz以上がair(空気感ときらめき)です。
EQでは、たいてい次の3つを調整します。周波数(どこを触るか)、gain(何dB上げ下げするか)、そしてQ(触る帯域の幅が広いか狭いか)です。この3つを掴んだ瞬間、どのプラグインを使うかは重要でなくなります。どれも同じ理屈で動いているからです。
- 大まかな地図を覚えましょう。低域(ボディ)は60〜250Hz、中域(キャラクター)は250Hz〜2kHz、高域(明瞭さ/明るさ)は2kHz以上。ほとんどの判断はこの3つの帯域で下されます。
- EQを立ち上げる前に、まず音をただ聴いて、一言で言い表してみましょう。『こもりすぎ』『細い/薄い』『耳障り』——この一言が正しい周波数へ導いてくれます。
- リファレンスとして好きな曲を手元に置きましょう。自分のミックスと聴き比べることで、耳を客観的に保てます。
Subtractive と additive:まず削り、それから足す
EQには2つの基本アプローチがあります。subtractive EQは、耳障りな周波数を削ること。additive EQは、好きな帯域を持ち上げることです。ルールはシンプルで、できる限りまず削り、それから足す。削ることは音を壊さずにクリーンにしてくれます。足すことは色とキャラクターを加えます。経験を積んだ耳は、作業の大半を削ることで片づけます。
なぜ先に削るのか。ある周波数を持ち上げると、狙った音だけでなく、その帯域にあるノイズや濁りまで一緒に大きくしてしまうからです。逆に問題を削って道が開ければ、残りの音は自然とよりクリアに聞こえます。たとえばボーカルがこもっているなら、3kHzを4dB持ち上げる前に、まず300〜400Hzの濁りを3dB削ってみてください。多くの場合、明瞭さはひとりでにやってきます。
additive EQは色付けのために取っておき、控えめにしましょう。1〜3dB程度の広めのブーストで十分なことがほとんどです。ある帯域を6dBも持ち上げているなら、問題はおそらくEQではなく、元の音かミックスのバランスにあります。削るときはもう少し大胆でも構いませんが、足すときは『少ないほど良い』です。
- 耳障りな周波数を見つけるには、狭いQでバンドを6〜8dB持ち上げ、スペクトラム全体を動かして、いちばん醜く鳴る場所を探します。そして、その周波数を持ち上げる代わりに数dB削ります。
- additiveのブーストは広いQで、1〜3dBの範囲に留めましょう。外科的な大きなブーストは不自然な音を生みます。
- 削ったあとはチャンネル全体のレベルが下がります。比較を公平にするために出力gainを合わせましょう(『大きい=良い』の錯覚に陥らないように)。
High-pass(low-cut)でミックスをクリーンにする
ミックスで最も手っ取り早い成果は、不要な低域を取り除くことから得られます。high-passフィルター(low-cutとも呼ばれます)は、設定した周波数より下を削ぎ落とします。ボーカル、ギター、シンセのように低い帯域のエネルギーを必要としないチャンネルの下に溜まった部屋鳴り、マイクの吹かれ、役に立たないサブのエネルギーは、ミックスの低域を詰まらせます。これらを削ると、kickとbassが呼吸しはじめ、ミックスは一気にすっきりします。
一般的な出発点の値です。男性ボーカルは80〜100Hz、女性ボーカルは100〜120Hz、エレキ/アコースティックギターは80〜100Hz、hi-hatやシンバルのような明るいパーカッションは300〜500Hz付近でhigh-passをかけます。これらはルールではなく出発点です。周波数をゆっくり上げていき、音のボディが痩せてきたと感じた地点から一歩だけ戻しましょう。
注意点として、high-passをかけすぎないこと。フィルターをボーカルのボディまで押し込むと、音は電話の声のようになってしまいます。また、kickとbassには通常high-passはかけません。彼らの仕事はまさにその帯域だからです。役に立たないサブ、たとえばbassの30Hz以下だけを取り除くために、ごく低い位置でのカットを検討する程度に留めましょう。
- high-passはsoloではなく、ミックスを鳴らしながら調整しましょう。単体では良く聞こえる低域が、ミックスの中では濁りを作っていることがあります。
- 必要なボディが痩せてきたと感じるまで周波数を上げ、そこから10〜20Hz戻します。これで安全なマージンが残ります。
- 多くのチャンネルに軽くhigh-passをかけるほうが、1つのチャンネルに強烈なカットをかけるよりクリーンな結果になります。低域は2〜3の楽器に担わせましょう。
濁り帯:200〜500Hzを飼いならす
ミックスが『濁っている』『こもっている』『毛布をかぶったよう』に聞こえる一番の原因は、たいてい200〜500Hz帯に溜まったエネルギーです。この帯域はローミッドと呼ばれ、ほぼすべての楽器のボディがここにあります。ボーカルの厚み、ギターの胴鳴り、ドラムのボディ、bassの上倍音——すべてがこの範囲で重なり合います。全員が同じ部屋に押し寄せると、ぼやけた塊が出来上がります。
解決策は、各チャンネルからこの帯域を少しずつ削ることです。ボーカルでは250〜400Hzを中程度の幅のQで2〜4dB削ると濁りが取れ、明瞭さが増します。リズムギターでは300〜500Hzを3dB下げると、ギターがボーカルやbassと競合するのを防げます。狙いは帯域を消し去ることではなく、それぞれの取り分を少し減らして、ミックスに息をさせることです。
この帯域に近い2つの隣人も知っておくと役立ちます。400〜600Hzは『箱っぽい/段ボールっぽい』(boxy)音の元、800Hz〜1kHzは『鼻にかかった』キャラクターを担います。音が段ボールから聞こえるようなら500Hzに、鼻から喋っているようなら900Hz付近に、狭いカットを試してみましょう。
- ボーカルがこもっているなら最初の一手:300Hz付近を中程度のQで3dB削る。多くの場合、明るさを足す必要すらなくなります。
- 同じ濁り帯を各チャンネルから少しずつ削りましょう。1つのチャンネルから大きく削るのではなく、負担を分散させます。
- bassとドラムのボディが重なっているなら、片方から200〜300Hzを削り、もう片方は残します。両方が同じ帯域でフルに鳴らないように。
- 削ったあとは、ミックスをスマホやノートPCのスピーカーで聴いてみましょう。濁りは小さいスピーカーで最もはっきり分かります。
Presence:2〜5kHzで明瞭さと前に出す力
ある楽器がミックスで前に立つか後ろに下がるかを最も強く決めるのが、2〜5kHz帯です。ここはpresenceと呼ばれ、音のアタック、明瞭さ、聞き取りやすさがここに宿ります。ボーカルの言葉の聞き取りやすさは3〜5kHz、ギターの爪やピックのアタックは2〜4kHz、kickの『カチッ』という打点は3〜4kHzに依存します。音を混雑の中で前に引き出したいなら、たいてい答えはここにあります。
ボーカルを前に出すには、3〜4kHz付近を広いQで2〜3dB持ち上げれば十分なことがほとんどです。ただし注意を。この帯域は同時に、耳が最も敏感な場所でもあります。上げすぎると音は疲れる、硬い、『耳障りな』ものになります。少しだけ触ってミックスの中で聴きましょう。ここでの2dBは、6dBのように感じられます。
presenceのすぐ上、6〜9kHzにはsibilance帯があります。ボーカルの『サ』『シ』『ス』といった音の高域成分がここです。これらの音が刺さるなら、広いEQカットではなくde-esserを使いましょう。de-esserはその音節が鳴ったときだけ働いて6〜9kHzを抑え、音の残りには手を触れません。
- ボーカルを前に出すには3〜4kHzを2〜3dB、広いQで持ち上げます。後ろに置きたいチャンネルでは、この帯域には触れないこと。
- 耳障りさは2〜4kHzから、刺さる『サ』音は6〜9kHzから来ます。この2つを混同しないこと。前者はEQカット、後者はde-esserの仕事です。
- ボーカルとギターを同時に3kHzで炸裂させないこと。両方が前に出ようとすると競合します。片方を選び、もう片方は後ろに置きましょう。
- presenceを足すときはA/Bを。ブーストをオン・オフします。オンにしたとき『より良い』ではなく単に『より明るい』だけなら、戻しましょう。
Air:10kHz以上で明るさと空気感
10kHzより上は、音の『空気感』の帯域です。ここのエネルギーは明瞭さというより、抜けの良さ、きらめき、そして高価な質感を与えます。ポップスやモダンなボーカルの仕事で、ボーカルが『呼吸している』ようにガラスのように明るく立つ秘密は、たいていここでの控えめな持ち上げにあります。airは言葉の聞き取りやすさではなく、音全体の質感に効きます。
最もクリーンな方法はhigh-shelf(ハイシェルフ)フィルターです。10〜12kHzから上を、1〜3dBの柔らかいシェルフで持ち上げます。これは一つの周波数を尖らせるのではなく、上の帯域全体を均等に開くので、自然に仕上がります。ボーカル、アコースティックギター、ルームマイク、ドラムのオーバーヘッドチャンネルは、この一手から最も恩恵を受ける場所です。
ただし、airが元の音に無いなら無理をしないこと。安っぽく、あるいはこもって録れた音で15kHzを6dBも開けば、シーというノイズと雑音を大きくするだけです。まず低域をクリーンにして濁りを取りましょう。多くの場合、ミックスはそれだけで既に明るく聞こえ、airはほとんど必要なくなります。
- airには10〜12kHzのhigh-shelfで1〜3dB持ち上げます。狭いバンドのブーストではなく、広いシェルフを使うほうが自然です。
- airを足す前に、必ずhigh-passと濁りの除去を終えておきましょう。クリーンなミックスには少しのairで十分です。
- airをやりすぎると最初に現れるのがsibilanceとシンバルの音です。『サ』音が刺さり始めたら、シェルフを下げましょう。
狭いQで問題を狩り、広いQで色を付ける
Qは、触る帯域の幅を決めるもので、EQで最も見過ごされやすい設定です。シンプルなルールはこうです。狭いQは問題解決のため、広いQは色付けのため。鳴り(リンギング)、唸り、あるいは高域のレゾナンスを狩るときは、鋭く狭いQ(およそQ4〜8以上)を使い、その尖った周波数だけに触れて隣人はそのままにしておきます。
音全体のトーンを形づくるとき、たとえばボーカルを温かくしたり明るくしたいときは、広いQ(およそQ0.5〜1.2)を使います。広いブーストは音楽的で自然に聞こえます。一つの周波数を尖らせるのではなく、帯域全体をまとめて持ち上げるからです。耳は、広く穏やかな動きを『音楽』、狭く鋭い動きを『補正』として受け取ります。
問題を狩る定番の方法:狭いQでバンドをはっきり持ち上げ、周波数をスペクトラム全体にわたってゆっくりスイープし、最も耳障りに鳴る地点を探します。そこが問題の周波数です。次にブーストをカットに変え、必要なだけ、たいてい3〜6dBだけ下げます。このテクニックは『sweep and destroy(スイープして潰す)』と呼ばれ、本当に効きます。
- 唸りやレゾナンスを狩っているならQを狭く(4〜8以上)し、犯人の周波数だけに触れます。広いカットは音のボディまで削ってしまいます。
- トーンを形づくるときはQを広く(0.5〜1.2)します。広い動きは常により音楽的に聞こえます。
- 狭いブーストはほとんど使いません。狭いQはたいてい削るためのものです。ブーストするならQは広く保ちましょう。
- 同じ周波数で狭く、かつ深いカットを同時にしないこと。そのとき音のボディの一部までもぎ取っているかもしれません。
各楽器に居場所を作る:周波数の分担
EQの本当の力は、一つの音を美しくすることではなく、複数の音を同時にクリアに立たせることにあります。これは周波数の分担、あるいはマスキング解決と呼ばれます。2つの楽器が同じ帯域でフルに鳴ると、互いを覆い隠し、ミックスがぼやけます。解決策は、それぞれの音にスペクトラム上の自分のコーナーを与えることです。
最もよく知られた例がkickとbassです。どちらも低域に住み、競合します。定番の解決策:片方で低域のボディを前に出し、もう片方でその周波数を軽く削ります。たとえばkickのボディを60〜80Hzに残し、bassの同じ帯域を2〜3dB下げます。その代わりにbassの輪郭を700Hz〜1kHzで前に出し、kickの『カチッ』を3〜4kHzで際立たせます。こうすれば、両方が別々の場所から聞こえるようになります。
同じ理屈はボーカルと楽器にも当てはまります。ボーカルの最も重要な帯域は2〜5kHzです。だからボーカルと競合するpad、シンセ、ギターのチャンネルで2〜5kHzを軽く削ると、ボーカルに道が開けます。これは『相補的なEQ(complementary EQ)』と呼ばれます。片方で持ち上げた場所を、もう片方で削るのです。楽器を互いのコピーではなく、互いを補い合うパーツとして考えましょう。
- kickとbassには:片方で60〜80Hzを前に出し、もう片方で削ります。同じ周波数で両方がフルに鳴らないように。
- ボーカルに居場所を作るには、後ろの楽器で2〜5kHzを2〜3dB削ります。ボーカルがその隙間に収まります。
- ある音を持ち上げたら、それと競合する隣のチャンネルで同じ帯域を削ることを検討しましょう。ブーストとカットはペアで働きます。
- パンニングもEQと同じくらい居場所を作ります。競合する2つの楽器を左右に振り分けるのは、ときにEQより速い解決策です。
実践的なEQワークフローと小型スピーカーの現実
まとめましょう。うまくいく順番はこうです。(1)まず不要な低域をhigh-passでクリーンにする。(2)狭いQで問題の周波数、鳴り、濁りを狩って削る。(3)必要なら広いQでトーンを形づくり、presenceとairを足す。(4)最後にミックスの文脈の中で、相補的なEQを使って各楽器に居場所を作る。つまり順番は、掃除する→補正する→色付けする→配置する、です。
EQとコンプレッサーの順番も重要です。濁りやノイズを取り除くsubtractive EQは、たいていコンプレッサーの前に置きます。こうすればコンプレッサーはクリーンな信号に反応し、低域が余計にポンピングを起こさせません。色を与えるadditive EQは、多くの場合コンプレッサーの後に置くほうが自然な結果になります。ルールではありませんが、堅実な出発点です。
そして最も大切なこと。ミックスは良いヘッドフォンだけでなく、スマホのスピーカー、ノートPC、可能なら車の中でも聴きましょう。スマホのスピーカーは200Hz以下をほとんど鳴らせません。だからbassのボディは、800Hz〜2kHzの上倍音が担うことになります。小型スピーカーでbassが消えてしまうなら、サブを上げる代わりにこの上倍音を軽く前に出しましょう。また、濁り(200〜500Hz)と耳障りさ(2〜4kHz)は、小型スピーカーで最も容赦なく現れます。判断はそこでテストしましょう。
これらすべてを学ぶ価値はありますが、各チャンネルで一つずつhigh-passを調整し、濁りを狩り、相補的なEQで居場所を作るのは時間がかかり、経験を積んだ耳を必要とします。ミックスよりも曲そのものに集中していたいなら、Seimixにstemをアップロードすれば、これらのステップの大部分を、計測に基づいたバランスの取れた周波数判断で自動的に適用できます。結果を聴いて、細かな詰めに集中するのはあなたに委ねられます。
- 順番を覚えましょう:掃除する(high-pass)→補正する(狭いカット)→色付けする(広いブースト、air)→配置する(相補的なEQ)。
- 掃除するEQはコンプレッサーの前、色付けするEQは後に置きます。これでポンピングが減ります。
- 重要な判断はすべてスマホとノートPCのスピーカーで確かめましょう。濁りと耳障りさは、そこでは隠せません。
- 耳が疲れたら休憩を。疲れた耳は絶えず高域とレベルを求めます。翌日に聴くと、ミックスはたいてい違って聞こえるものです。
よくある質問
EQでは、まず削るべき? それとも足すべき?
一般的なルールは、まず削る(subtractive)、それから足す、です。耳障りな濁りやレゾナンスを削れば、音は自然と明瞭になり、多くの場合、足す必要すらなくなります。足すなら、広いQで1〜3dBといった穏やかな量に留めましょう。大きなブーストはノイズまで持ち上げ、不自然な音を生みます。
ボーカルには何Hzからhigh-pass(low-cut)をかけるべき?
出発点として、男性ボーカルは80〜100Hz、女性ボーカルは100〜120Hzが良い目安です。フィルターをゆっくり上げていき、ボーカルのボディが痩せてきたと感じた地点から10〜20Hz戻します。狙いは部屋鳴りとマイクの吹かれを取り除くこと。ボーカルを電話の声に変えてしまうほど押し込まないでください。
200〜500Hz帯はなぜこれほど重要なの?
ほぼすべての楽器のボディがこのローミッド帯に集まり、重なり合うとミックスが『濁って』『こもって』聞こえるからです。ボーカルでは300Hz付近、リズムギターでは300〜500Hzを中程度のQで2〜4dB削ると、この溜まりが解消されます。各チャンネルから少しずつ削って負担を分散するほうが、1つのチャンネルから大きく削るよりクリーンな結果になります。
EQはコンプレッサーの前と後、どちらに置くべき?
濁りやノイズを取り除くsubtractive EQは、たいていコンプレッサーの前に置きます。こうすればコンプレッサーはクリーンな信号に反応し、低域が余計にポンピングを起こさせません。色と明るさを与えるadditive EQは、多くの場合コンプレッサーの後のほうが自然です。ルールではありませんが、堅実な出発点の並びです。
狭いQと広いQは、いつ使い分ける?
狭いQ(およそ4〜8以上)は問題解決のため。鳴り、唸り、尖ったレゾナンスを、隣に触れずに削ります。広いQ(およそ0.5〜1.2)はトーンを形づくるため。ボーカルを温かくしたり明るくしたりといった用途です。耳は広い動きを音楽的、狭い動きを補正として受け取ります。
kickとbassは周波数でどう分ける?
どちらも低域に住むため競合します。解決策は相補的なEQです。片方で低域のボディを前に出し、もう片方でその周波数を軽く削ります。たとえばkickのボディを60〜80Hzに残してbassの同じ帯域を2〜3dB下げ、その代わりにbassの輪郭を700Hz〜1kHz、kickの『カチッ』を3〜4kHzで前に出します。こうすれば両方が別々の場所から聞こえます。
ミックスがスマホのスピーカーで悪く聞こえる。EQで何をすべき?
スマホのスピーカーは200Hz以下をほとんど鳴らせないので、bassのボディは800Hz〜2kHzの上倍音が担います。bassが消えてしまうなら、サブを上げる代わりにこの上倍音を軽く前に出しましょう。また、濁り(200〜500Hz)と耳障りさ(2〜4kHz)は小型スピーカーで最もはっきり現れます。判断は必ずそこでテストしてください。
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